前回は、「東洋医学は難しそうに見えるけれど、本当は生活に根ざした医学だった」というお話をしました。
東洋医学の土台には 自然哲学 があります。
「哲学」と聞くと難しく感じますが、基本にあるのは、もっと素朴な 自然の法則をそのまま体に当てはめて考える視点 です。
今回は、その自然の法則の一端をご紹介します。
■ 自然に起きることは、人の体にも起きる
古代の人々は、日常生活の中で自然をよく観察しました。
そして、自然界で起きることは人の体でも起こるのではないかと考えたのです。
たとえば、
-
火は上へ向かって燃え上がる
-
水は高いところから低いところへ流れる
-
風は常に動き、乾燥は潤いを奪う
こうした自然の動きは、体の中でも起こりうるものとして捉えられました。
人も自然の一部である以上、同じ原理が体に反映されるという考え方です。
具体例としては、体の内部に“熱”がこもると、その熱は上へ昇りやすくなります。
臨床でもよく見られますが、
-
のぼせる
-
足は冷えるのに上半身だけ熱い
といった症状は、まさにこの考え方で説明できます。
治療としては、
-
体の余分な熱を逃がす
-
冷ます力(陰)を補って整える
-
上に昇った熱を下に降ろす
などの方向性が考えられます。
このように、自然界の動きを体に当てはめて理解する──これこそが東洋医学らしさのひとつです。
■ 陰陽という自然の“二つのはたらき”
自然の法則を理解するうえで欠かせないのが 陰陽(いんよう) の考え方です。
陰陽論とも呼ばれ、東洋医学を支える大切な基礎になります。
これは、「世の中のすべてには二つの側面がある」という視点です。
しかも、その二つは“反対の性質でありながら、互いがあって初めて成立する”という関係にあります。
例を挙げると、
-
男 ↔ 女
-
大人 ↔ 子ども
-
強い ↔ 弱い
-
熱い ↔ 寒い
-
上 ↔ 下
-
動 ↔ 静
どれも反対に見えますが、片方だけでは存在できません。
寒さがあるから暑さを感じられ、明るさがあるから暗さがわかります。
つまり、
「すべてのものは二つの性質で成り立ち、互いに補い合って存在している」
ということになります。
古代の人々は自然を観察し、この関係性を見出しました。
これが陰陽です。
■ 東洋医学ではあらゆる場面に登場する陰陽
東洋医学を学んでいくと、陰陽は本当に多くの場面に登場します。
-
熱 ↔ 冷
-
乾燥 ↔ 湿り
-
興奮 ↔ 落ち着き
-
硬い ↔ 柔らかい
など、対になる性質は無限にあります。
大事なのは、
「必ず二つでセットで捉える」 という視点です。
陰陽論を深く掘ると専門的で難しく感じるかもしれませんが、最初は今回のようにシンプルに「自然も体も、陰と陽のバランスで成り立っているんだな」
と思っていただければ十分です。
里山の風が静かに通り抜ける場所で、
日々の臨床の合間に少しずつ書いている「東洋医学ノート」。





